ジャックアールの拠点

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どうもみなさんこんにちは!このブログは僕が自作小説の投稿をメインに行っていく所になります(.-_-.)

1-#6 土とともに(この世界の実状)

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#5 はこちら

 歩き出してから30分ほど経過した。「ポペラヒルク」に向かって左側には林、右側には広大な畑が広がっている。
 先ほど自分たちが降り立った厩舎はもうかなり遠い。汗をかくほどではないが、デスクワーカーの僕にとってその距離はとても長く感じた。「神」は黙々と歩き続けている。

「あ、あと、、、どれくらい、、、ですかね、、、?」

 息をきらしながらも声を振り絞って聞いてみた。

「そうだな…あと2kmくらいだろう。

 彼は相変わらずの口調で言った。

「に、、、2km、、、?」

 思わず口にでてしまった。さっきまで空中を高速で移動していたのに、急に徒歩1時間ほど歩かされるはめになっているのだ。なぜ、さっきの移動方法で「ポペラヒルク」まで行かないのか…
 僕は疑問で仕方なかった。しかし、この疑問をそのまま彼に問うのもどうかとも思った。なんの理由もなくこんな距離を歩かせるわけがない。

 僕は考えた。今まで普通に関わってきたが彼は仮にも「神」なわけで、「この世界の秩序」を守らなければいけない立場ではないのだろうか、と。現実世界で「神」という存在は曖昧な部分が多い。神話などで語り継がれていることはあるが、彼のように「実際に存在していると認知できる」状態の神を僕は見たことがない。
 もし、そのような「秩序」がこの世界にもあるのなら、この世界の住人(土界人)に姿を見られてはならないのではないだろうか。そう考えると一番、納得がいく。

 結局、彼には聞かずその解釈でおさめておいた。そういえば、まだ一度も「土界人」に会っていない。というか、今のところ人の気配をまったく感じない。
 「土界人」とはどういう風貌なのだろうか… 僕たち「空人」と同じようなのか、もしくはまったく違う姿なのか…。

「あの、、、土界人は、、、どういう見た目をしてるんですか、、、?」

 相変わらずの息づかいの中、質問した。

「見た目…か… 彼らは君たち「空人」と同じ見た目だ。

 それを聞いて安心した。見た目が違えば変に目立ってしまうかもしれないからだ。知らない世界で目立つようなことは絶対に嫌だった。彼は続ける。

「そして、皆とても純真な心を持っている。「空の世界」にある「嘘」という概念が、彼らにはないのだ。」

 なるほど…それは僕にとってはとても有難いことだ。現実世界の「嘘にまみれた社会」の中で生きていくことに、僕は限界を感じていた。だから、人との関わりもあまり持ちたくはなかったのだ

「正直者が馬鹿を見る」

 …そんな言葉があるくらい、現実世界を正直に生き抜くのはとても難しいことだった。
 社会人になると、直接何かを言われることは少なくなる。
 間接的、遠回しにじわじわと僕の心を追い込んでくるのである。そんな卑しくよどんだ環境を生きていく中で、僕の「自尊心」はすっかり衰弱してしまった。

 まさに「真綿で首を絞められる」ような気持ちで日々を過ごしていたのだ。「嘘」の概念がないということはそういう気持ちにならずに済む、ということだと思う。

 もちろん、なんでもかんでも思ったことを直接言うということは、それはそれで良いことばかりではないが。
 少なくとも、僕個人はそっちの方が明らかに楽なのだ。だから、「今までとは違う感覚で人と関われる」という希望が見えた。

「そっか…よかった…。」

 僕は小さく呟いた。彼は僕の呟きに気づいたのかどうか分からないが、少し間をおいて続けた。

「それから、彼らは私のことを「神」と認識していない。」

 少し違うが、先ほど自分が立てた仮説と似たようなことが彼の口から出てきた。「それはどういうことですか?」という僕の心内を読んだかのように、彼は、続けて補足を始めた。

「正確には「この大陸の人々」にとって私は「神」ではない。」

 ますます分からない。彼は説明を続ける。

「この世界には私以外に6人、つまり私を含めて7人の「神」がいる。」

 また一つ、凄く重要かつ壮大な内容が淡々と明かされた… 驚く間もなく話は続く。

「そして、この世界には4つの大陸が存在している。「ポペラ」、「エオリ」、「カコル」、「ニムレ」。これらがそれぞれの大陸の名前だ。ちなみに、ここは「ポペラ大陸」だ。」

 学校であればテストに出そうなほど重要な内容だ。つまり、上空から見えた景色はこの世界の「ほぼ半分」が見えていた、ということになる。胃もたれしそうなほど超濃厚な話はまだまだ続く。

「それぞれの大陸にはそれぞれ1人、「神」が就く。そして、どこの担当も持たない残りの3人は他4人の補佐、並びにこの世界全体を管理し均衡を保っている。」

 なんと壮大な話だろう。まさに絵に描いたような「神話」である。

「私はその中の「担当を持たない3人」の一人だ。」…

 

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