ジャックアールの拠点

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どうもみなさんこんにちは!このブログは僕が自作小説の投稿をメインに行っていく所になります(.-_-.)

1-#3 土とともに(「神」と名乗る謎の男)

#2 はこちら

「へっ?」

 あまりに唐突な発言に理解が追い付かない。

「あ、あの…」

 返答に困る僕に、その神と名乗る怪しい男はゆっくりと近づいてきた。僕は危険を感じ、とっさに後ずさりをする。すると彼は冷徹な口調で言った。

「わたしから離れると空の世界には戻れなくなるぞ。」

「空の世界?」

 そもそも意味が分からない状況なのに、次から次へと理解を超える物事が追加されていく。とにかく現状を把握したい。しかし、何を言えばいいのか全く思いつかない。

「あの、言っていることが全く分からないのですが…」

 とりあえず今感じていることをそのまま口にだす。すると彼はこう言った。

「なるほど…ではとにかく私から離れるな。そうしてくれるのなら気になることに可能な限り答えよう。」

 どうやらこちらの言葉は伝わっているようだ、初めてちゃんとした応答があった。意思の疎通ができると確認できたので少し安心した。
 ここは彼の言う通り、あまり離れないでおこう。僕は彼の言う範囲内に留まりながら質問をした。

「一体ここは何なんですか。それに空の世界って…」

 彼は僕の質問に対して、食い気味に答えた。

「ここは土界(どかい)。この地球の内側に存在する世界だ。我々、土界人(どかいじん)は君たち空人(そらびと)を認知しているが、その様子だと君たちは我々を認知していないようだな。」

 またでてきた、意味の分からない世界観が。土界?土界人?空人?そんなこと、今までの世界の歴史の中でも出てきたことはないだろう。
 しかし、ここまでくると素直に理解できるようになってきた。というか、多分そうしないと頭がおかしくなってしまうだろう。

「は、はあ。。なんとなくは分かりました」

 あらかたの謎は理解できたが、まだ一つ大きな疑問が残っている。

「ではもう一つ。「なぜ僕がこの世界に来たのか」が理解できません」。

 そう、これが一番の謎だ。「神」と名乗るくらいなのだから、「空人」である僕がこの世界に来た理由も知っているはず。

「それは…」

 彼は言葉を詰まらせた。

「それは私にもわからない。」

 少し考えた後にそう言った。本当にそうなのか?言葉を詰まらせた時の彼の顔は何か知っている風だった。それなのに、考えた上で「わからない」と言っている。
 意思の疎通が出来ているとはいえ、まだ彼を完全に信じているわけではない。僕は疑いの眼差しを向け、彼に言った。

「本当ですか?今の答え方はどこかおかしかった。本当は何か知っているんじゃないですか?」

 僕は感じた疑問点をそのまま伝えた。世界の常識を根本から覆されるような「世界」、そんなところに理由もなしに飛ばされたりするわけがないのだ。しかも強制的に。
 それなのに何か知っている雰囲気を出しながら、答えない彼にいらだちを隠せなかった。彼は答えた。

「私は「わからない」と言ったのだ。決して何も思い当たるものがない、というわけではない。」

 若干言葉尻を捕らわれた気がしてムッとした。彼は続けた。

「200年ほど前に空人が来たことがある。彼もわけもわからず気づいたらこの世界にいた、と言っていたな。」

「えっ…」

 いきなり新事実が発覚した。過去にも空人は来ていたというのだ。現在が2019年(令和元年)なので200年前だと1819年(文政2年)、日本は江戸時代後期頃だ。あまりにも昔すぎる話だが…。僕はその人のことについて質問してみた。

「なんというか、その… その人はどんな風貌だったんですか?聞いてた感じだと言葉は通じていたみたいですけど」

 彼が本当に「神」であるなら、この地球上全ての言葉を理解し話せるはずだ。そうなるとどの国の人か、などがわかるかもしれない。彼は腕を組み、少し考えた後答えた。

「うむ、あれはおそらくケルト派生語の第1種…空の世界で言うところの「英語」だな。服装は少し派手でひらひらとしたものが全体的に付いていたな。」

 派手でひらひら… その年代だとヨーロッパの人々はそんな服を着ていたような印象を受けるが、英語となると少し違うかも。イギリス人の可能性もある。
 インターネットで検索すればより詳しく調べることができそうだが、「こういう世界ではインターネットが使えない」、という創作物のありがちな設定がこの世界にもあった。僕のスマホも当然、圏外だ。

「その人はその後、どうなったのですか?」

 今は目の前にいる「神」から話を聞くしかない。

「彼は今、この世界の東にある街「ポペラヒルク」で暮らしている。」

 驚愕な話だ。なんと、200年前に来たという彼はまだ生きているというのだ。この話を聞いて、この世界の時間の流れは現実とは違うんだということが分かった。
 もし、その「彼」が本当に空人でまだ生きているというのなら、実際に「彼」に会って話を聞いたほうが色々と良い気がする。「まち」という単語がでてきたのでそちらも気になるが…今は「彼」に会うことが先決だと思う。

 とりあえず「彼」に直接会えないか聞いてみる。「神」は行ってみないとわからない、と言うので、さっそく僕たちは「東の都市」だという「ポペラヒルク」に向かうことになった。

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